弦長に対するネックの長さ
新しい楽器を製作するとき、まずはじめに考えるのが弦長です。弦長から逆算される適切なネックの長さやボディのサイズなどがあるからです。
弦長やサイズがあらかじめ決まっているヴァイオリンやチェロについては当然それに対応したネックの長さも数値化されているのですが、いろんなサイズがあるコントラバスにおいてはネックの長さも個体差があります。
ネックの長さが演奏に及ぼす影響は、親指がネックの付け根の部分に当たる第4ポジション付近からの運指のしやすさです。一般的に、第4ポジションで自然に人差し指で弦を押さえた場所がG線のDの音程になるのが正しいネックの長さです。その楽器の持つ弦長のちょうど3分の1の場所にあたります。
多くの奏者にとってこのポジションはハイポジションへと移行する際の基準となるので、自然に第4ポジションをかまえたときにDの音がピタッと正確にとれることは重要なことです。
ネックが長いと第4ポジションを正しくとったときにネックの付け根の部分に親指が当たらず安定感に欠けます。逆に短いとネックの付け根部分に阻まれてそもそも第4ポジションを正しくとることができませんし、その先のFやFisも遠くてとりづらくなります。技術でカバーできない分、ネックが短い方が致命的ですし、ネックの長さに問題がある場合のほとんどは短くて弾きにくいというケースだと思います。
ネックの長さに問題がある場合の修理の話になると、ネックが短い方がやりようがあります。第4ポジションで親指が当たる部分を削ってやれば解決できる場合がほとんどで、この方法でしたら比較的修理費も安く済むと思います。ただし、楽器によってはその部分を削ることでハイポジションを弾く際に楽器の肩が干渉して弾きづらくなることもあるので、そこの見極めはしっかりと行われなければなりません。
ネックが長すぎるという場合の修理は継ぎネックをするか、延長ナットという特殊な修理を施したりします。そこまでして修正が必要なほどの楽器はめったに見かけませんが・・・
今回はネックの「長さ」というテーマでしたが、奏者の皆さんが気にするべきは単純なことで、「第4ポジション付近の運指に違和感がないか」ということです。そこを見極めるためにもいろんな楽器に触れてみてほしいし、自分の楽器に少しでも演奏のしずらさを感じたなら、単純な修理でその問題が解消されることがあるということも是非知っておいてもらいたいと思います。